今や若年層に限らず多くの人にとって日常的に使われるツールとなったSNS。企業が商品やサービスの認知拡大・購買促進の手段として使うことも増えていますが、採用活動においてSNSを活用しようという企業アカウントを見かけることも多いです。
そこで本記事ではSNSを取り入れた採用活動(ソーシャルリクルーティング)について解説していきます。SNSは学生や社会人の多くが利用しており、活用方法次第では採用活動の効率を大きく変えてくれます。
SNSの特徴を捉えた上で活用し、理想的な採用活動を実現しましょう。
SNSを採用活動に取り入れると良い理由
株式会社マイナビが2021年10月に行った「2023年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査」によると、62.7%の2023年卒業予定の学生が、SNSやソーシャルメディアを使って就職活動関連の情報収集をしていることがわかります。
「企業の最新情報を手に入れる」、「人事担当者と繋がる」、「就活仲間との情報交換」など、様々な目的がソーシャルリクルーティングによって達成できます。そのため、大変な就職活動を効率的にしてくれるツールとしてSNSは重宝されています。
採用活動において就活生や求職者と接点をもつために、企業のSNS活用は必須となりつつあります。では、採用活動でSNSを用いると具体的にどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
SNS採用のメリット
SNSを採用活動に取り入れることにはたくさんのメリットがあります。
- 低コストで始められる
- 企業の魅力をダイレクトに伝えられる
- 幅広い層にアプローチできる
- リアルタイムで更新できる
- ミスマッチの防止に繋がる
低コストで始められる
SNSの利用は基本的に無料。有料プランを利用するにしても、サービスの利用そのものに大きな費用がかかるわけではないため、無駄な出費を抑えながら採用活動を行えます。
採用に予算をあまり割けない中でも気軽に始められるのがSNSの魅力的な点だといえます。
企業の魅力をダイレクトに伝えられる
SNSを使えば企業の魅力を求職者にダイレクトに伝えられます。
求人広告や人材紹介サイトでは伝えられる内容に限りがあり、自社の強みや魅力を十分に伝えられないことがあります。一方、SNSでは社内の雰囲気や従業員がどんな働き方をしているかなど、リアルな職場の内情を見てもらいやすいです。
SNSを利用すれば、自社の魅力や伝えたい部分を強調して伝えることができます。
幅広い層にアプローチできる
SNSの大きな特徴はその拡散力やリーチできるユーザーの数です。
例えば、誰か1人に投稿をシェアされれば、その人の知り合いやフォロワーにどんどん投稿が拡散されていき、たくさんの人にアカウントを認知してもらえます。既に自社に興味を持っている層だけでなく、潜在層にもアプローチが可能です。
従来の手法だけではアプローチできなかった人に情報を届けられることは、SNS活用の大きなメリットといえるでしょう。
リアルタイムで更新できる
SNSはリアルタイムで情報を届けられるため、「今、伝える必要がある情報」をすぐに伝えることができます。
また、今世の中の人がどんなワードや事柄に興味をもっているのかを素早くキャッチして投稿しやすいという一面もあります。
流行っている内容と自社の事業などをかけあわせたコンテンツを発信すれば、拡散される可能性も高まり、求職者に見てもらえるチャンスを増やすことが可能です。
トレンドを把握し、コンテンツを考えることで企業の認知度アップに繋げましょう。
ミスマッチの防止に繋がる
日本企業の離職率は近年高く、その原因の1つが企業と求職者のミスマッチです。厚生労働省の2022年10月時点のデータによると、2019年の就職者における就職後3年間の離職率について、高校卒・大学卒のどちらも3割を超えています。
採用活動には時間も労力もかかります。時間をかけて採用した人がすぐに辞めてしまってはその努力とお金が無駄になってしまいます。
ソーシャルリクルーティングを行うことで企業で働くイメージを具体的に持ってもらい、ミスマッチを防ぎましょう。
SNS採用のデメリット
一方、SNSを利用する上で気を付けた方が良いデメリットも存在します。本章でおさらいしておきましょう。
- 運用に工数がかかる
- 短期的な採用には向いていない
- 炎上のリスクがある
運用に工数がかかる
SNS上では常に大量の情報が更新されていきます。一定の更新頻度がないと投稿が埋もれていき、ユーザーに見てもらうことができません。
また、SNSは基本的に双方向のコミュニケーションが想定されています。フォローしている企業や学生の発信に対してリアクションをとらないでいると、あまり良い印象は持たれません。
コンテンツの企画や発信、リアクションなど、SNS上で意識した方が良い項目は多く、工数がかかってしまうのが難点です。
短期的な採用には向いていない
SNS運用はすぐに結果が出るものではありません。
中長期的に自社の魅力を伝え、就職活動をしている層にアプローチを続けることでようやく効果が出てきます。
そのため、「今すぐに人材が欲しい」というような短期的な採用にはSNSの活用は向いていないでしょう。
炎上のリスクがある
SNSを活用する上で最も大きなリスクは「炎上」です。
拡散力が高いツールであるからこそ、少しの言葉遣いのミスやコンテンツの不適切さが、収拾のつかないところまで発展してしまいます。
SNSの更新者はネットリテラシーを高める必要があります。投稿に関しては第三者にチェックをしてもらうことで炎上のリスクを防ぎましょう。
容易に利用できるSNSですが、社名を背負っているので、慎重にアカウントの運用を行ってください。
SNSの種類と特徴
採用に利用できるSNSにはたくさんの種類があり、特徴も異なります。自社に合うSNSはどれなのかを判断する基準として参考にしてみてください。
- X(旧Twitter)
- YouTube
- LINE
- TikTok
X(旧Twitter)
X(旧Twitter)は、国内トップクラスのユーザーを抱えており、ユーザーの年齢層も広く、新卒・中途関わらず採用に活用できるSNSです。
Xの強みはなんといっても拡散力の高さ。Xではフォロワーが少なくても拡散されやすい投稿をすることで、無名の企業でも多くの人にアプローチできる可能性があります。
「X Premium(旧Twitter Blue)」というサブスクリプションサービスでは、投稿をしてから1時間以内であれば5回まで編集が可能。炎上対策ができるだけでなく、なりすましの対策にも繋がります。
Instagramは画像や動画の投稿に特化しています。企業の情報を視覚的にアピールできるだけでなく、ハッシュタグを使うことでユーザーに見つけてもらいやすくなります。
プロアカウントにすることでインサイトを見ることができるため、どの層にどんなコンテンツでアプローチをかけていくかの分析もしやすくなっています。
着飾った投稿をするのではなく、企業の魅力的な点や情報を率直に、リアルに伝えることが大切です。
YouTube
YouTubeは全年代に利用されており、ユーザー層の広さはマスメディアに匹敵しています。
他のSNSのように、投稿したコンテンツがタイムライン上に流れるのではなく蓄積されていくので、ユーザーが「あの動画をもう一度見たい」となったときに見返しやすくなっています。
動画の平均的な視聴時間は5分程度で、1本の動画で多くの情報量を詰め込めるのも特徴です。
近年は、YouTube上に会社説明動画や、社員インタビューなどの動画を残して、動画の閲覧を選考段階で促している企業も多くあります。YouTubeを活用した採用活動が一般化したことで、これまで対面で何度も行っていた会社説明会の工数や人件費を削減することも可能になってきています。
LINE
LINEはXと同様、国内の利用者はトップクラスで、幅広い世代が利用しています。公式アカウントを使えば登録者に情報を一斉送信でき、効率的な情報発信が可能です。
公式アカウント登録用のQRコードやIDを広告媒体に掲載しておけば、応募者の母集団形成が容易で、候補者と簡単に連絡をとることができます。
ただし、通知の頻度が多すぎると不愉快に思われたり、無料で送信できるメッセージの数が限定されていたりといった注意点もあります。
TikTok
若年層を中心に動画投稿の需要は伸び続けており、TikTokも活用の余地があります。
企業がTikTokの活用を始めたのは最近のことで、XやInstagramに比べるとTikTokを活用する企業はまだ多くはありません。
TikTokのコンテンツは「気取らない」「面白い」「自然な」動画に人気が集まる傾向があるため、ユーザーに親近感を持ってもらいやすい点が特徴です。
ただ、TikTok上では事業内容を飛び越えた企画動画が発信されることが多く、行き過ぎた過激な企画は企業のイメージダウンや炎上のリスクを伴うことを理解しておく必要はあります。
Facebookは30代以上のユーザーが多く、社会人向けのSNSとして活用されるケースがよく見られます。基本的に若年層へのアプローチは難しいため、中途採用を目的に活用されることが多いです。
原則アカウントは実名制で匿名性が低く、経歴やスキルをプロフィールに記載している場合が多いため、企業側もターゲットを絞ってアプローチしやすいといえます。
SNSを活用した企業の採用活動事例3選
採用にSNSを用いることの重要性やSNSの特徴を説明してきましたが、まだイメージが湧かないという方も多いと思いますので、事例をいくつかご紹介します。
株式会社サイバーエージェント【X(旧Twitter)】
引用:https://twitter.com/ca_recruit_info/status/1676834488175951873
株式会社サイバーエージェントでは、下記のようにX上で複数のアカウントを作成し、それぞれのアカウントで発信する情報を分けています。
内容ごとにアカウントを分けて、それぞれのアカウントのフォロワーに向け、興味を引く内容を発信しています。例えば、エンジニア採用のアカウントでは専門的な技術情報に関連する内容、新卒採用アカウントでは企画職・総合職志望向けの幅広い内容の発信が可能になっています。
ほとんどの投稿がWeb上のスペシャルコンテンツや採用イベントを案内する内容になっており、運用目的に沿ったわかりやすいアカウントとなっています。
株式会社JALスカイ【Instagram】
参考:https://www.instagram.com/jalsky_saiyo/
続いてご紹介するのは、株式会社JALスカイのInstagramの採用アカウント。
就職活動に関する情報だけでなく、社員紹介や業務風景、会社の雰囲気をバランスよく掲載しており、他の媒体を見なくてもここだけで十分な情報収集ができます。
また投稿のキャプションに詳しく文章を載せるのではなく、画像上にテキストを載せることで視認性を高めていることもポイントです。文字も大きく、非常に見やすい構成になっています。
株式会社商船三井【YouTube】
参考:https://www.youtube.com/@molchannel8469
大手海運会社である株式会社商船三井では、「若手社員の1日に密着」と題して1日の業務の様子を動画にまとめて発信しています。
BtoB企業の業務内容は、求職者(特に新卒就活生)にとってはなかなか想像しにくい部分も多く、入社後のギャップにつながることも。そこでこのような動画を発信することは入社後の働くイメージをより鮮明にしてくれます。
イキイキと働く社員の様子を発信することで、求職者からのイメージ向上にもつなげられるコンテンツとなります。
SNSを運用する際のポイント
SNSを運用することが決まった際には意識しておくポイントがあります。SNSは一度発信されると取り消せない場合も多いので、発信の際には細心の注意を払いましょう。
以下、運用する際の注意点について解説します。
- 求職者のニーズに応えたコンテンツを発信する
- プライバシーやコンプライアンスに注意する
- フォロワー数以外の指標も重要であることを理解しておく
求職者のニーズに応えたコンテンツを発信する
上記でも触れましたが、SNS運用においてはターゲット設定が重要です。ここが不明確だと届けたい人に情報が届きません。よくある事例としては、求職者向けの情報と顧客向けの情報、また社内の日常風景などを伝える投稿が混在し、情報が埋もれてしまっているパターンです。
また、届けたい人に情報が届いていても、内容が求職者のニーズに沿ったものでなければ、自社への興味は薄れていってしまいます。
誰からのいいねが多いのか、どんなコンテンツでターゲットの反応があるのかを分析し、ターゲットのニーズに応えたコンテンツを発信していきましょう。
プライバシーやコンプライアンスに注意する
運用者のバイアスがかかった投稿内容にならないように注意が必要です。無意識に特定の人を不当に差別してしまったり、誹謗中傷する内容になっていないか、最新の注意を払って運用することが重要になります。
SNSを運用する際には、社内で運用チームを組み、投稿の際には複数人によるチェック体制を取ることで、炎上のリスクを回避しましょう。
また、投稿は社員の生活に影響を与えることも忘れてはいけません。SNS上に社員の顔や身体の一部が映った投稿をする際は、必ず社員の了承を得てから掲載する必要があります。トラブルが起きないように、社内外問わず双方に対して配慮あるSNS活用を心掛けましょう。
フォロワー数以外の指標も重要であることを理解しておく
SNSを採用に活かす上で気になるのがフォロワー数です。しかし、フォロワー数が全てではないことも企業SNSアカウントを運用する上で理解しておくと良いポイントの1つです。
求職者は個人名や身元が志望企業にバレることを避けるために、志望企業のSNSアカウントをフォローしない傾向にあります。単にフォロワー数を稼ぐことを目的とするのではなく、投稿の閲覧数や保存数など、どれだけ投稿が見られているかをチェックするようにしましょう。
中途採用でもSNSは使える?
中途採用にもSNSは活用できます。
中途採用では特に、採用したい人材に人事担当者等から直接アプローチするスカウト採用(ダイレクトリクルーティング)において、SNSを活用する企業は少なくありません。
ただし、SNSは求人採用を行うことを目的としたツールではないため、ユーザー側はスカウトが来ることに対して必ずしも好意的な印象を抱くとは限りません。SNSを使ったソーシャルリクルーティングは、ユーザーと人事担当者の個別の関係性なども考慮しながら慎重に行う必要があります。
SNSの活用で採用を成功させよう
採用活動におけるSNSの活用は魅力的なメリットが多い一方で、注意点もたくさんあり、効果が出るのにも時間はかかります。
しかし、SNSがなければ出会えなかった優秀な人材と出会える可能性があるのもまた事実です。
SNS運用のポイントを押さえながら、求職者生のニーズに応えたコンテンツをどんどん発信していきましょう!